どうも、平下です。現在2021年4月8日15時37分。
先日、ハミングバードプロジェクトという映画を鑑賞しました。
日本では19年9月に公開された映画です。監督はカナダの映画監督、キム・グエン監督。
主演は『ソーシャル・ネットワーク』などで有名なジェシー・アイゼンバーグ。
映画のあらすじは、分かりやすく言ってしまえば当時の高頻度売買の限界を追求する男達のドラマですね。
実話に基づいて制作された映画です。
ハミングバードとはハチドリですが､ハチドリ1回の羽ばたきが0.001秒。
主人公のヴィンセントと相棒のアントンは他の投資家よりも0.001秒早く先回りして発注するために、
カンザスのデータセンターとNY証券取引所の1600km間を地中深く、一本の光ファイバーで繋ごうと奔走します。
当然、土地の買収や掘削に莫大な資金と時間が必要になります。
リニアのような夢のある話でもなく、ただただ他人を出し抜くために途方もないリスクを取る・・・。
バカみたいな話ですが、実際にそのプロジェクトに大金を投じた人間や実行に移した人間がこの世にはいる訳です。
人間の欲というのは底なしですね。
この映画のなかで、印象に残ったのが主人公の相棒アントンと、田舎のカフェのウェイトレスの会話です。
田舎に光ケーブルを引くことがなぜ大金を生むのか理解出来なったウェイトレスにアントンはこう説明します。
アントン「君がレモン会社の株を1株最高10ドルで1000株買おうとネットに買い注文を出すと、
トレーダーたちがレモン会社に売値を提示する。誰よりも早く取引をするならどうすればいい？」
ウェイトレス「最速ケーブルを使えばいい。」
アントン「カンザスからNYまでアクセスして1セント安く株を買って君に10ドルで売る。
今は往復に0.017秒かかるけど直に0.016秒になる。」
ウェイトレス「0.016秒って？」
アントン「ハミングバード1回の羽ばたきさ。僕は1セント×1000株で10ドル儲けた。」
ウェイトレス｢10ドルのためにこんなことを？｣
アントン「取引は毎日20万件、週末は休んでも年に五億ドルになるよ。まさにタイムトラベルだ。」
ウェイトレス「レモン畑の農民の分け前は？」
アントン「農民は関係ない。考慮されない。」
ウェイトレス「そんなの嫌よ。私は考慮されない農民にはなりたくない。」
アントン「それは興味深い考察だ。」
・・・こんなやり取りです。
私もこんな仕事をしていますので感傷に浸るつもりはありませんが、
一方でこの世界をどこか冷めた目で見ている自分がいるのも事実です。
投資やトレードに虚業的な側面があるのも事実でしょう。
歴史人口学者エマニュエル・トッド氏の言葉を借りるなら、
パンデミックでこの国が倒れずにすんだのは、トラック運転手、スーパーのレジ係、看護師、医師、教員のおかげであり、
金融マンや法律を巧妙に操れる人のおかげではなかった、といったところでしょうか。
金融をテーマに扱った映画は「ウォール街」「マネー・ショート」「ウルフオブウォールストリート」等ありますが、
絵に描いたような大団円で終わる物語はほぼ皆無。
(あ、「大逆転」はハッピーエンドでしたね。)
大方は即物的な生き方に疑問を投げかける作風となっていますが、
このハミングバードプロジェクトも多分に漏れず、苦い結末で終わります。
ただ、投資家やトレーダーにはお勧めの作品です。
暁投資顧問 平下
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